新年早々、大地震・航空機事故と続き、嫌な幕開けになってしまいました。
能登では余震も続いているようですが、今朝の新聞に載った輪島市の火災後の写真。
1995年1月17日の阪神淡路大震災後の神戸・長田の光景に余りにもよく似ていて悲しい気持ちになりました。
もうこれ以上、悪いニュースが続かないことを祈りつつ、被害に遭った方々にお見舞い申し上げます。
こんな社会状況の中で、能天気にもばらのブログを書くのは気が引けますが、植物を相手にする「道楽」は、季節・時期のタイミングを逸することができませんので、あえてこの時期に行う接ぎ木の手順をご紹介します。
とは言っても、例年と特別違った方法で接ぎ木をしたわけではありません。
2022年1月1日の記事と併せてご覧ください……こちらの方が分かり易い写真があるかもしれません。
ただし、今年度版は「切り接ぎ」に加えて「張り芽接ぎ」もご紹介します。
作業をしたのは2023年12月31日……家内が慌ただしく迎春準備をしているのに、ばら(ばか)オヤジは接ぎ木に没頭していた次第です。
まずは「切り接ぎ」……私はこちらの方法を採用しています。
12月上旬から畑に仮植えしてあった台木を掘り起こしてみると、クラウン(株元)部分の芽が動いていました。
これを水洗いして泥を落とします。
根を整理します。
4.5号のビニールポットに収まるように根を短く切り詰めます。
一握り(8~10㎝)でバッサリと切ります。
一方、接いだ苗をコーティングするために、パラフィンを湯煎して溶かしておきます。
使用しているパラフィンはろうけつ染めで使う「135°F」という商品です。
まず穂木を調整します。
毎度申し上げますが、私は出来るだけ「節(ふし)」の部分を穂木として使います。
この部分には隠れた芽(潜伏芽)がたくさんありますので、株が成長した際にクラウンになる部分に多くの芽がありシュートの元になる……と勝手に素人判断しているからです。
まずは剪定鋏で「角度を付けて(30°位)」で切ります……教科書では45°位で切るようになっていますが、私はもっと鋭くします。
鋏で切った面はザラザラしていますので、改めてナイフでスパッと切って、切断面を滑らかにします。
次に反対側の樹皮を薄く(深さ0.5~1㎜)、長さ1.5㎝ほど削ぎます。
穂木を取る枝はこの段階まで長いままの方が作業がしやすいです。
先端の調整が完了して初めて1芽または2芽(私は「節」+1芽)で枝を切って「穂木」が出来上がります。
ご覧の通り、私はこんな極端な「楔(くさび)型の穂木」に調整します。
理由は、後述するカルス(癒合組織)が発生・成長する「斜めの面」をできるだけ広くするためです。
なお、接ぎ木の教科書に書かれている「形成層」とは、
それぞれ細~~い濃いグリーンの部分ですが、お分かりでしょうか?
次に台木の準備をします。
これまた、へそ曲がりの私は接ぎ木の教科書とは違った切り込み方をしています。
通常は最初に台木上部のクラウン部分を切り取り、次に上から下に向かって「切り下げる」という方法で台木を切り込みます。
しかし、この方法では上から下へ切り込みを入れる際にナイフが滑って、台木を持っている方の手をバッサリと切って大出血する事故が、しばしば起こります。
血を見ることが恐ろしい臆病者の私は、昔から「鉛筆削り方式」を採用しています。
私は血を見ることが怖くて自然とこの方法を採るようになりましたが、どうやら私だけのオリジナルではないようです。
You Tube やネット上でもこの方法が見られますし、(公財)日本ばら会の「ばらだより」にも福岡県の稲永さんの方法として紹介されていました。
さて私の「鉛筆削り方式」ですが、まず台木のクラウン部分を握り、適当な位置にやや角度を付けてナイフを立て(60°~70°)、1~2㎜の深さまで刃を差し込みます。
そこから刃の方向を水平に変えてス~ッと滑らかに2㎝程切り込みます。
ここでクラウン部分を切り離します。
その際に、切り込んだ「皮」の部分の先端3~4㎜も含めて切り取ります。
その理由は、「台木の準備①」でナイフを立てて切り込んでいても、削り始めはどうしても削りが浅くなるために、その部分が「顎(あご)状」になって障害となり穂木との接触面に隙間が空いてしまうからです。
さらにその「顎状」の障害部分をなくするために、台木の内側にナイフの刃を入れて、先端の2~3㎜をスパッと斜めに削ぎ飛ばします。
こうすることによって、穂木が「顎」に邪魔されず台木に密着します。
次に穂木を台木に差し込みます。
穂木の樹皮を削ぎ取った部分を台木の内側に、斜めに切り取った部分を台木の「皮」側にします(が、逆にしても活着します……芽の方向によっては、わざと逆に差し込むこともあります)。
この時に、教科書では「台木と穂木の形成層を合わせる」ことを強調していますが、それ以前に大切なことは、「穂木を台木の切り込みの底まで(力を入れて)しっかりと差し込むこと」です。
活着の第一歩であるカルスは、この「差し込みの底」から発生・成長します。
穂木の差し込みがルーズですと、この「底のカルス」が発生せず、接ぎ木が失敗します。
次に大切なことは、教科書通りに「台木と穂木の形成層をピッタリと合わせる」ことです。
台木と穂木の形成層が合っているかどうか、目で確認することは出来ませんが、穂木と台木の外側がピッタリと一致していれば、とりあえずOKとします。
穂木と台木のそれぞれ両側の形成層同士が一致することは(我々素人には)難しいことですから、それぞれの片側同士が一致していればOKです。
なお参考までに接ぎ木苗のカルスの成長状況を2例、ご覧ください。
いずれも初期のカルスの発生・成長は「台木の皮側」から始まっています。
つまり接ぎ木の教科書では「台木と穂木の形成層をピッタリと合わせる」と書きつつ、台木の内側と穂木の薄く削いだ側の形成層を合わせる図が描いてあります。
しかし、カルスは台木の皮側から発生・成長するわけですから、ピッタリと合わせる形成層は「台木の皮側の形成層と穂木の斜めに切った側の形成層をピッタリと合わせる」ことが重要……これが私の主張です。
また、私が穂木の準備をする際に斜めに切断する面=台木の皮の部分に密着する面を、教科書よりも鋭く切って「楔型」にする理由も、つまりはカルスの発生・成長する面を広くしたいという意図からです。
要するに、
①(黄色の円内)穂木を台木の底までしっかりと差し込む。
②台木と穂木の(それぞれ片側の)形成層同士をピッタリと合わせる。その際「台木の内側の形成層(赤色の円内)」よりも「台木の皮側の形成層と穂木の形成層の一致(矢印)」を重視する。この写真では「台木の内側の形成層」と「穂木の形成層」は(赤色の円内)合っていません。一方、「台木の皮側の形成層」と「穂木の形成層」がピッタリと一致(矢印)しています。
次に台木と穂木の位置が絶対に動かないように注意しながら、接ぎ木テープを巻きます。
私は幅30㎜(70㎜ずつのミシン目入り)のニューメデールを縦半分(幅15㎜)に折って使用しています。
穂木の下部を充分に固定してから上方に巻き上げます。
台木の切り口に被さるように巻き、穂木と台木との間に水が入り込まないようにします。
最後にパラフィンでコーティングします。
パラフィンの温度は65~70℃、接ぎ木テープ全体がコーティングされる深さまで浸けますが、その時間は1秒以内。
これで「切り接ぎ」は終わりです。
大変に長くなって恐縮ですが、次に「張り芽接ぎ」も紹介いたします。
台木の準備は「切り接ぎ」と同じです。
クラウン部分は切り取らずに必ず残してください。
まず「穂木(穂芽?)」ですが、秋の花が咲いた枝の中間あたりの充実した芽を使います。
芽の準備として、接ぎ木の作業をする4~5日前に葉をむしっておくと、芽が赤くなってちょっと膨らみます。
黄色の円内が5日前に葉をむしった芽、矢印は葉が付いたままです。
矢印の部分の葉をむしって、芽を見ると、
葉をむしってあった芽は、
明らかに膨らみ方が違います。
この膨らんだ芽を「接ぎ芽」として使います。
トゲを切り取って枝を持ちやすくしてから、
①芽の上方からナイフを入れて深さ2㎜ほどに切り込みます。
②芽の下の部分からやや角度を付けて切り込み、1.5㎝ほどの長さで芽の部分を切り出します。
切り出した芽の表側は、
裏側は、
秋に行なった「T字接ぎ」の時には芽の裏側の木質部を取り除きましたが、「張り芽接ぎ」ではこのままでOKです。
次に台木の準備をします。
クラウン部分を握って「鉛筆削り方式」で長さ1.5㎝、深さ2㎜ほどまで切れ目を入れます。
次に切り込んだ底に「顎(あご)」を作るイメージで、やや角度を付けて切り込みます。
この切り離した台木の部分(黄色の円内)と、先ほどの穂木の芽の部分、
この両者が全く同じ形・大きさになるのが理想です(素人には至難の業ですが)。
それはさて置き、台木は、
①→②の順で切り込み、芽を受ける「顎」を作ります。
台木の形成層は、薄い黄色の部分です。
この台木の形成層と削ぎ取った芽の形成層がピッタリと合うように、芽を差し込みます。
台木の切り込み部分と削ぎ取った芽の部分が同じ形・大きさであれば全ての形成層がピッタリと合致して活着率が100%になるはずですが、なかなか理想通りにはなりません。
「切り接ぎ」の時と同様に、台木・穂芽のそれぞれの一方の形成層が密着するように芽の位置を微調整します。
最後に接ぎ木テープ(ニューメデール)を巻きます。
まず、接いだ芽の下方をしっかりと固定します。
芽が動き始めた時の障害にならないよう、芽の部分はテープが一重になるようにします。
「張り芽接ぎ」はパラフィンでコーティングする必要はありません。
クラウン部分はそのままにしてビニールポットに植え付けます。
1ヶ月程度経過して、接いだ芽が1㎝ほど伸びた時に芽の上1㎝ほどで切断します。
実は私、「張り芽接ぎ」が苦手で活着率は50%程度。
それに対して「切り接ぎ」はほぼ100%成功します。
これから接ぎ木にチャレンジなさる皆様は、それぞれ2つの方法をお試しになり、活着率の高い方を採用なさってください。
以上「切り接ぎ」した苗も「張り芽接ぎ」した苗も、4.5号のビニールポットに植え付け、深水にポットごと浸けて充分に水を吸わせます。
植え付けの用土は例によって、
バイオゴールドの「ストレスZERO」……大変高価な土ですが、会員の皆様はご存知の通り、コンテストの賞品として頂戴したものです。
私がコンテストで、他の賞はともかく「バイオゴールド賞」だけは「懸命に獲りに行く」所以(ゆえん)です。
今日の天気は雨予報でしたので鉢の土替えを中止して、この長文のレポートを書きました。
現在17時15分……朝から雨どころか薄日が差し込むほどの「高曇り」の一日。
しかも無風状態!!
これなら戸外の仕事ができたやんけぇ!と叫びたい気持ちで一杯です。
明日は風が吹きそう……困ったもんだ~~
追伸:昨日来、当ブログのアクセス数が異常に多くなっています。
ありがたいことですが、何事が起こったのか?理由が分からず、狼狽(うろた)えています。