あけましておめでとうございます。
いつも関西ばら会ブログをご覧いただきまして、ありがとうございます。
本年も土曜・日曜を中心に更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
新年初日の今日、本来ならば御屠蘇気分で大人しくするのが世間の常識かもしれませんが、初日の出(大阪で 7:05)の頃から風が止み、穏やかな冬日になりましたので、元日の今日も丸一日、鉢の土替え作業をしておりました。
貴重な「ばら作業休暇」を一日たりとも無駄には出来ません。
何しろクリスマス寒波以降、強風のために作業が遅れ気味で、少々焦っております。
さて、実は昨日(大晦日)ですが、年越し寒波の来襲で強烈な西風が吹き荒れ(明石の最大風速は朝 6:16 に西北西の風 20.6m/sec)、屋外の作業ができませんでした。
貴重な一日をボ~~っとしているのは惜しいので(← 年末の家事の手伝いをせぃ!という声も聞こえます)、本来は1月に入ってから(通常、小寒~大寒の間に)行う作業ですが、30数株ほどの接ぎ木をしました。
私はいわゆる「切り接ぎ」を行います。
「張り芽接ぎ」をしたこともありますが、「切り接ぎ」の方が成功率が高かったので、この接ぎ方を採用しています。
以下、「けがをしない台木の削り方」も含めて、私自身の接ぎ木のやり方をご紹介します。
まずは準備。
部屋を暖めている石油ストーブを利用して、パラフィンを湯煎して溶かしておきます。
パラフィンはろうけつ染めの資材を取り扱っているお店で購入できます。
私は、「135°F(ペレット状)」というものを使っています。
完全に溶けるまで、20分ほどかかります。
お湯の温度は65℃前後を保ちます。
以上の準備ができれば、畑に仮植えしておいた台木を掘り起こします。
接ぎたい品種の穂木を準備して、トゲを除去します。
穂木はその年の5月に一番花を咲かせたステム、または2番花のステムが良いと思っています。
とにかく硬く締まった枝が理想です。
次に台木に接ぐ部分を斜めに切ります。
【注意】この時、穂木は長いままの方が作業がやりやすいですよ。
斜めの角度は、普通は45°だそうですが、私の切り方はもっと鋭く、60°位の角度だと思います。
剪定ばさみで切ったので、切り口が荒れています。
そこで改めてナイフで切り口をスパッと切って、切り口の面をシャープにします。
【お詫び】先日のツルばらとの格闘の結果、指が傷だらけ……見苦しくてスンマヘン。
これで台木に接いだ時の「外側(=台木の皮側)」の面が完成です。
次に穂木を180°回転させて、接いだ時の「内側(=台木の髄側)」の面を作ります。
2㎝程度、表皮を削(そ)ぎます。
削ぐ深さは形成層が見える程度。
↓ このくらいです。
この時、先ほどスパッと削った外側は、↓ こうなっています。
これを真横から見ますと、
この画像でお分かりかと思いますが、私の穂木は外側の角度が急(鋭角)です。
(普通は45°と言われています。)
なぜこれほど外側を鋭角にするかと申しますと、
穂木が台木に活着した際、まずカルスができるのはこの外側であるのがお分かりだと思います。
このカルス部分をできるだけ大きくしたいという発想から、外側の面を広くする……つまり穂木の切り口を鋭角にするという削り方にしているのです。
ここまで接ぎ口を作って、初めて穂木を短く切ります。
【コメント】ご覧のように、私は穂木として「節」の部分を好んで使います。
節の部分には見えない「芽」がたくさんありますので、穂木の中に「シュートの元」が多くあるように思うからです。
ただし、この部分を使うと1芽だけで接ぐ穂木に比べて、3月以降に伸びる1番枝の伸び方が貧弱です。
次が「けがをしない台木の削り方」です。
台木を用意します。
穂木よりちょっとだけ太い台木が理想です。
根部を一握り程度(10㎝前後)にカットします。
台木の「首」部分の茶色の薄皮や土をこすり落とします。
細い根が出ていたら、それも生え際から除去します。
【注意】ここからが「けがをしない」工夫!
普通はここで台木のクラウン部分を切り落としますが、切ってはダメです!
クラウン部分を握ってください。
そして、ナイフで「向こう側」に向かって、鉛筆削りの要領で台木を薄く削(そ)ぎます。
ここで初めて台木の上部(クラウン部分)を切り落とします。
切る場所は、鉛筆削りの先端1~2㎜ほどを含めた部分です。
クラウン部分を切り取った台木の先端は、まだ「鉛筆削り」の深さが浅いことが普通です。
そのため、台木の最上部が「顎(あご)状」になって出っ張っている(=穂木の内側が顎(あご)につかえて台木の形成層に密着しない)ことが多いので、台木の内側の先端2㎜ほどを60°程度の角度をつけて「面取り」します。
これで一応台木の完成です。
【コメント】世間の常識的なやり方では台木を「切り下げ」ます。
しかしその作業中に刃を滑らせて、台木を持つ手をバッサリと切って大出血という悲劇が頻繁に起こります。
しかしこの「鉛筆削り方式」ならば、ナイフの刃は(穂木を削る時・台木を削る時も)常に「こちらから向こうへ」という方向ですので、けがをすることが少なくなるはずです。
いよいよ穂木を台木に挿入します。
穂木の「内側(穂木の表皮を削(そ)いだ側)」と「外側(角度をつけて剪定ばさみで切り、ナイフでスパッと切った側)」を間違えないでください。
【余談】外側・内側を間違えても活着します。
芽の方向が悪い時には、わざと内側・外側を逆にすることもありますが、あまりお勧めはしません。
次が絶対に重要なポイントです!
穂木と台木の形成層が合わさるように穂木を差し込みます。
とは言っても、形成層が重なっているかどうかは見えません。
下の写真 ↓ で言えば、台木の「皮」部分の右端と、穂木の角度をつけてスパッとカットした面の右端が合っていれば(たぶん)OKです。
(通常、穂木と台木の太さが違いますので、片側の形成層があっていればOKです。)
かつ、穂木を台木の切り込みの底まで、きっちりと(ある程度の力を入れて)押し込んでください。
この押し込みが甘いと活着率が下がります。
穂木を台木の底まで押し込んだ際、角度をつけてスパッとカットした面が台木の「皮」部分からはみ出してしまうことがあります。
こうなってしまうと、なぜか活着率が低くなります。
この場合は台木をもう少し切り下げて、穂木の「外側」のカット面を台木を削(そ)いだ「皮」部分で完全に覆うようにします。
接ぎ木テープを巻きます。
私が使っている New メデール は伸ばしながら巻きつけます。
台木と穂木の接ぎ口部分をしっかりと固定します。
12月19日の接ぎ木講習会では、穂木の上の方までテープで巻くように指導されていましたが、私はその方法を取りません。
穂木までテープで巻いていると、ちょっとした力の入り具合で接ぎ口がずれてしまうことがしばしば起こるからです。
台木の接ぎ口の少し下から巻き始めて、台木の切り口を覆うまできっちりと巻いておきます。
しかしこのままでは穂木から水分が発散してしまいます。
そこで登場するのが冒頭で準備していたパラフィンです。
テープを巻いて水分の発散を予防する代わりに、パラフィンでコーティングして穂木からの水分の発散を防ぎます。
パラフィンに浸(つ)けるのは0.5秒くらいです。
お湯の温度が65℃程度ですので、パラフィンは(たぶん)60℃くらいだと思います。
パラフィンの温度が高すぎると芽を痛めますし、温度が低すぎるとコーティングが分厚くなってしまいます。
これを4.5号ビニールポットに植え込みますが、私なりのこだわりがありまして、バイオゴールド社の Stress ZERO を使います。
この用土は水はけ良く、また水保ちも良く大変良くできています。
(我が関西ばら会のスポンサー企業様ですので、大々的に名前を出して精一杯高く評価したいと思います。)
ちょっと……いや、かなり高価な用土ですが、私はコンテストの賞品として手に入れています。
毎回のコンテストで、私がバイオゴールド賞だけは「意地でも取りに行く」という意気込みで出品していることにお気づきでしょうか?
この賞品だけはどうしても取りたいと思っています。
ポットの底には用土がこぼれないように台所用のごみ取りネットを切って使います。
植え込みの終わったポットは十分に灌水して、透明の衣装ケースに入れ、日当たりの良い縁側に置きます。
今後は温度管理が重要になります。
以上、私なりの接ぎ木をご紹介いたしました。