日本海側では大雪だそうですが、石川・福井の会員の皆様、様子はいかがでしょうか?
明石では天気は良いものの冷たい西風が吹き荒れ、外仕事は午前中で打ち切りました。
さて、昨日の講習会で質問がありました事柄について、ここで補足しておきます。
まず、台木の管理について。
すぐに接ぎ木をしない場合、台木をどうすればよいか……という質問でしたが、お庭の日の当たらない場所に仮植え~~斜めに植えて(十分に水を与え)土をかぶせる~~しておきます。
私も接ぎ木は(12月末から)1月上旬に行いますので、とりあえず今日、畑に仮植えしました。
台木を穴の縁に沿って、斜めに並べて水を注ぎます。
この状態で株が隠れるほど土を入れて、もう一度水を注ぎます。
そうすると、水とともに根の隅々まで土が入ります。
その後、株がほぼ隠れるほど土をかぶせて終了です。
この状態で2ヶ月程度は問題ありません。
次に、昨日は「切り接ぎ(穂接ぎ)」を実習しました。
私自身も切り接ぎをしておりますが、以前は「芽接ぎ(張り芽接ぎ)」をしたこともありました。
講習会テキストにも簡単にその方法を記しましたが、神奈川在住の当ばら会会員であるマッキ様からもリクエストがありましたので、ここでもう少し詳しく紹介します。
まず、切り接ぎの穂木は硬く充実した1番花または2番花の咲いた枝を使いましたが、芽接ぎに使う芽は秋花が咲いたステムの中ほどの芽を使います。
ステムを切って、すぐに芽接ぎの作業をしても構いませんが、日数に余裕があれば、次のような準備作業をしておくと良いと思います。
良い葉が付いている箇所の芽を使いますが、ここぞと思う部分の葉(黄色の円内)を、芽接ぎ作業を行う5~7日前に葉柄ごとむしり取ります。
すると、5~7日後には、
ふっくらと膨らんできます。こんな芽を使うと活着率が上がると思います。
次は芽接ぎの作業です。
写真の台木は、2月にトゲナシノイバラの種を蒔き、発芽したものを5号プラスチック鉢に植えて10ケ月育てた自家製台木です。
鉢植え株ですので細根がびっしりと生えていて、畑育ちの市販の台木とは様子が違います。もちろん、市販の台木を使うのが普通です。
台木の上部(クラウン部分)は切り離してはいけません。このまま使います。
根は手のひらで一握りの長さ(10㎝程度)に切り詰めます。
まず、台木のクラウン部分を握って、「鉛筆削り方式」で深さ2~3㎜まで削り下げます。
切り接ぎは1~2㎜の深さで削り下げましたが、芽接ぎはそれよりもやや深く削り込みます。
長さ1.5~2㎝ほど削ってナイフを抜きます……ステップ①。
次に、ナイフの刃に30~45°程度の角度を付けて切り込み、ステップ①でナイフの刃を止めた部分に「顎(あご)」を作ります……ステップ②。
ステップ①の削り込みによって、台木の形成層(写真の緑色部分)が見えているはずです。
もちろんステップ②で作った顎の内側にも、目視はできませんが形成層が現れいるはずです。
さて、今度は接ぎ芽の準備です。
芽の上下を間違えないように、まず芽の上1㎝の場所から深さ2~3㎜程で芽をえぐるようにナイフを入れます。
芽の下5~7㎜で刃を抜きます。
次いで台木の時と同様に、ナイフの刃に30~45°程度の角度を付けて切り込み、芽を枝から取り外します。
写真右側の切り口の角度が、台木に作った顎の内側の角度と一致することが必要な条件です。
その角度が一致することにより、斜めに切れている樹皮のすぐ内側にわずかに見えている?形成層が、台木の顎の内側の形成層にピッタリと合うはずです。
この両者の角度の不一致が、芽接ぎ失敗の1つの原因になります。
なお芽の裏側は、
こちらの方が、形成層がわかるでしょうか?
この形成層と、先ほど台木に入れた切り込みに見えていた形成層とがピッタリと一致することが、絶対に必要な条件です。
つまり、芽接ぎの名人であれば、
この両者の形が全く同じになり、次の作業で台木の切り込みに接ぎ芽がジグソーパズルのようにピッタリとはまり、すべての形成層が重なり合って確実に活着する……はずですが、我々素人はなかなかそうもいきません。
ましてや、私のような「芽接ぎ迷人」は両者の形がひどく違いますので、活着率が上がらず、芽接ぎを「卒業」、否「落第・退学」することになったのだと思います。
それはさて置き、台木の切り込みに接ぎ芽を挿入します。
接ぎ芽の裏側の木質部や髄は取り外しません。
上述のように、台木の切り込みと接ぎ芽の大きさが違いますので、台木と接ぎ芽の形成層の一方同士がピッタリと一致するよう、接ぎ芽の位置を微調整します。
今の画像↑、お気づきですか?
ご覧の通り、台木の形成層が見えています。つまり、接ぎ芽と台木の形成層が一致していません。
この接ぎ木は活着しません。。。これが芽接ぎ失敗の一番多い原因です。
接ぎ芽をあと0.3㎜台木の皮側に寄せなければなりません。
台木と台芽の形成層のどちらか一方同士をピッタリと合わせる作業が終われば、接ぎ木テープ(ニューメデール)を巻きます。
台木の顎より下の部分(接ぎ芽にかからない部分)から巻き始めます。
顎の部分は何重に巻いても構いませんが、芽の部分は一重にし、またさらにその上は二重以上巻きます。
実はこの時に芽接ぎ失敗の原因の3つ目が潜んでいます。
こんな感じです↓。
お分かりでしょうか?
芽の上を一重に巻く時に、テープを伸ばすために横に強く引っ張ると、
こうなります。
接ぎ芽全体が横に引っ張られて、形成層の一致が大きくずれてしまいます。
芽の上を覆う時には、接ぎ芽に余計な力が掛からないよう、十分に注意します。
この状態で、接ぎ木テープの部分が完全に地上に出る深さで、4.5号のビニールポットまたは5号程度の鉢に植え、十分に灌水します。
室内の南向きの窓辺などに置き、昼間は日光に当てます(カーテン越しでも可)。
2週間ほどするとクラウン部分の芽が一斉に動きますが、そのまま放置します。
1ヶ月ほどして、接ぎ芽が動き始めたことを確認できれば、接いだ部分の上で、クラウン部分を切除します。
以上、私自身は今では give up した芽接ぎ(張り芽接ぎ)の手順を詳述しました。
切り接ぎ(穂接ぎ)と芽接ぎ(張り芽接ぎ)ともに、1月を最適期として行う作業(12月中旬~2月末まで可能)です。
どちらの接ぎ方がご自分に適しているか、試してみるのも良いと思います。
台木を入手して接ぎ木を覚えると、ばら作りの楽しみの幅が広がります。
最後に、ダブルディライトの「花中花」の今日の様子です。
下段の花がすっかり散ってしまいました。
上段の花は双子です。
いずれにしてもお恥ずかしい窒素過多の現象でした。